宇多田ヒカル
小袋成彬
酒井一途
座談会

Section 11

「一つの世界観に融合させるために、なにか架け橋が必要だなって、両方録り終わった後に感じた」

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「一つの世界観に融合させるために、なにか架け橋が必要だなって、両方録り終わった後に感じた」

小袋:音楽的な面で、今回もっとも挑戦したことは?

宇多田:意識的にこれということはなかったよ。けど振り返ると、歌を完成させるためにポストプロダクションを多くやってた。バンドも、録ったあと綺麗にエディットするというのとは別に、私が自分でばっさり使わないことを決めて、プログラミングしたトラックに戻しちゃうとか。もしくはすごくエフェクターをかけて、全然元の通りには聞こえないような形にしちゃうとか。特に自分の声を、声っぽくない形で楽器みたいに使って、あとから切り貼りして編集したりした。そうやって、歌に欲しかった要素がやっと揃って、ようやくこれで完成だって、なったな。
 今までは、歌入れが全部終わったら、要素としては完成だったんだけど、今回はそれだけだと物足りなく感じたんだ。生音が増えたことで、ヴォーカルとバンドっぽい音が多いトラックの、乖離を感じたからかもしれない。調和してなかった。どこか同じplain(面)にいない、一緒のところにいない感じがあって。私が今回作った曲とヴォーカルを、一つの世界観に融合させるために、なにか架け橋が必要だなって、両方録り終わった後に感じたの。かといってプログラミングした音だけ足しても、どうにもならない。だから自分の声をエディットして、感じてる物足りなさとか穴を埋めにいったのかな。

小袋:ヒカルさんの曲作りにおいて、違和感やメロディが重要ということは、プロデュースされてる中でもずっと言われてたんだけど、その次に来るのがリズムなんだろうなと思ってる。一緒に「パクチーの唄」を作ってたときも、まあリズムにうるさい。すごくこだわる。

酒井:どういうこだわりなの?

小袋:三連になるところがあって、そこを「トゥトゥトゥ・トゥトゥトゥ・トゥ」じゃないとダメなんだ、ダメなんだ、ってずっと言ってて。もう、そうじゃないとだめなのよ。僕はこんなにリズムにこだわりをもって、聴きどころにしているシンガーって、あまり見たことがない。もちろん他にもいるけど、ヒカルさんはプライオリティがあまりにも高すぎて。

宇多田:私はメロディ自体をリズムとして捉えてるから、私からしたらリズムにピッチついてるみたいな感じ。

小袋:だから第一言語が音楽っていうのは、まさにそうなのよ。メロディの次がリズムなのよ。同じくらいに和声でしょ。そしたらもう音楽だから。

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宇多田ヒカル/初恋

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